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株式会社名古屋画廊
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企画展開催スケジュール

5月9日[金]-24日[土] 馬場駿吉×北川健次 -春雷疾駆/ストラヴィンスキーの墓上-
北川健次 《Venezia-ダリオ舘の記憶》 15.7×11.0cm ミクストメディア
 馬場駿吉×北川健次
-春雷疾駆/ストラヴィンスキーの墓上-
5月9日[金]-24日[土]’25
11:00a.m.-6:00p.m. 日・祝休廊
(土曜日 12:00p.m.-5:00p.m.)
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■ヴェネツィア-北川健次作品への言葉の倶物
                    馬場駿吉
 イタリアの海上都市ヴェネツィアに魅せられた古今の芸術家、詩人たちは枚挙にいとまもないほどです。
 それらの著名人たちに比すべくもないのですが、私も日本の俳人として彼の地を訪れたこと10回を超え、そこで得た作品も100句を数えることになった1999年、句集『海馬の夢』を上梓しました。この句集中には今回コラボレーション展を快諾して下さった北川健次さんが撮られたヴェネツィアの素敵なカラー写真3点が挿画として掲載されています。
 さて、刊行からはや26年の歳月が流れ過ぎました。一緒にヴェネツィアを訪れたことはないのですが、北川さんも私に劣らずヴェネツィア・フリークの一人です。北川さんの作品展は、近年、日本橋髙島屋のギャラリーなどで、ボックスアートの形式に準じたコラージュやオブジェが主体。時代や時間を超越したイメージの重層には、ヴェネツィア特有の妖気が感じられます。
 今回のコラボレーションでもその妖気を北川さんの作品からも感じとりながら、短い言葉の倶物を捧げることとなりました。感謝の気持でいっぱいです。(俳人・美術評論家)

■馬場駿吉 略歴:1932年名古屋市生まれ。中学時代に俳句入門。故橋本鶏二に師事。第二回四誌連合會賞受賞。名古屋市立大学医學部卒業、同大学医学部教授(耳鼻咽喉科学)、同大学病院長、日本耳鼻咽喉科学会会長、名古屋市美術館参与、名古屋ボストン美術館館長、愛知県立芸術大学客員教授等を歴任。中日文化賞、東海テレビ文化賞受賞。現在、名古屋市立大学名誉教授、名古屋造形大学客員教授、名古屋演劇ペンクラブ理事長、芸術批評誌「REAR」編集同人、現代俳句協会会員。
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■ヴェネツィアの春雷-馬場駿吉さんと共に
                   北川健次
俳諧を、近世という暗黒時代に咲く「異次元の巨花」と語る歌人の塚本邦雄は、その著書『百句燦燦』の中で稀代の俳人たち、すなわち寺山修司、永田耕衣、中村草田男、馬場駿吉、西東三鬼…など六十九人の秀句百句を選んでいる。
…その中で馬場駿吉さんの俳句はヴェネツィアを詠んだ作品が数句登場している。「娼婦の日傘/黒死病の町の/千年後」、「春雷の/金斧の下に/白馬の死」。日傘で太陽を遮る娼婦の句の時間感覚も不気味に深いが、わけても私は「春雷の……」の俳句に先ずは指を折る。それは、この句に登場する春夜のヴェネツィアのアドリア海上に、怒りを込めたように雷光を帯びてたなびく凄みある春雷の姿を偶然に目撃しているからである。それは馬場さんの句が見事に紡いだように正しく金色の斧と形容するに相応しい殺意と絢爛を含んだような光景であった。私はそれが忘れ難く、『ヴェネツィアの春雷』という連作で刻むように作品を十数点作った事があった。
数年前の或る日、馬場さんにその春雷の体験談をお話しすると、馬場さんもそれを春夜のヴェネツィアで実際に観た事があると言われた時には、嬉しさのあまり不思議な感慨が湧いて来た。……深夜のアドリア海上で乱舞するその春雷を、馬場さんと共に目撃したような交感の入り交じった気持ちが溢れて来たのであった。今回の馬場さんの俳句と私の美術作品による二人展の萌芽は、既にしてその瞬間に立ち上がっていたように思われるのである。
……今回、馬場さんは俳句でヴェネツィアの美の毒杯や歴史の繚乱とその闇の深度に求心的に迫り、私はヴェネツィアで覚えた頽廃美を放射するように、パリやヴィクトリア期のロンドンまでも舞台を拡げた作品を立ち上げている。
そこから交差して浮かび上がるヴェネツィアの幻視は、観る人の自由な感性によって様々な想像へと拡がっていくであろう。想像力の原器としての艶を帯びたヴェネツィアの底知れぬ拡がりが、そこに在るのである。(美術家)

■北川健次 略歴:美術家。1952年福井県生まれ。多摩美術大学大学院美術研究科修了。駒井哲郎に銅版画を学び、池田満寿夫・棟方志功から高い賞賛を得て作家活動を開始。1990年文化庁派遣芸術家在外研修員として渡欧。2008年にランボ-を主題とした作品が、ピカソ、クレー、ジャコメッティ、ジム・ダインらと共に選出され、フランスのアルチュ-ル・ランボ-ミュ-ジアムにて展覧会が開催される。銅版画、オブジェ、写真など幅広く制作し、詩や美術評論も広く手がける。
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