企画展開催スケジュール
5月30日[金]- 6月7日[土]市野 英樹 展 -語りつづける、思索と豊かさ-
市野 英樹 展
-語りつづける、思索と豊かさ-
5月30日[金]-6月7日[土]’25
11:00a.m.-6:00p.m. 日・祝休廊
(土曜日 12:00p.m.-5:00p.m.)
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■語りかける作品 ― 市野英樹さんのこと
藪野 健
1960年代の終わり頃、上野の東京藝術大学の市野英樹さんのアトリエを訪ねたことがあった。当時の藝大は美校も音校もこげ茶色の木造洋館で明治のままだった。美術学部も音楽学部も昔のまま美校、音校と呼ばれていた。校舎に入るとほんのり明るく、高い天井のアトリエで市野英樹さんはほぼ室内と同色の絵を描いていた。グレー、イエロー・オーカー、ローシエナが基調で少し目が慣れてくると、描かれているテーマが浮かび上がってきた。それは室内風景で、目を凝らすと空間の中に人々が登場した。交わされる会話は清澄な空気の中で、ゆっくりと時が進む。そして美校の、壁をつたわって明り取りの窓につながっていく。当時の絵画の流行とは全く違う作品に出会ったのだ。1969年10月、東京都美術館の二紀展で峻烈なデヴューとなった作品だった。岡田信一郎設計の旧都美術館にふさわしい作品だった。第2室に130号2点が存在感を示していたのだ。130号は大作で、表層的な鮮やかさと力でぐいぐいおす作品の中で新鮮だった。深くじっくり描きこんだ表現は今日に至る。市野英樹さんとは二代に渡る。父上の長之介さんと、私の父の正雄とは長いお付き合いで市野英樹さんとは、何十年と数えたら良いのだろう。市野英樹さんの作品は語りかける作品で、いままで作品は語り続けている。深く味わいがあり絵とともに過ごせば思索と豊かさが得られよう。(日本芸術院会員 早稲田大学栄誉フェロー、名誉教授)
■市野英樹 略歴:1942/名古屋市生。67/東京藝術大学(牛島憲之教室)卒業。69/同大学院修了。69~/二紀展(78宮本賞、87菊華賞、90鍋井賞、92文部大臣奨励賞)。75/第18回安井賞展(以後76,78,79,80,81,82年)。76/現代日本美術展。78/個展(坂崎乙郎企画、紀伊國屋画廊、東京都新宿)。79/二紀会委員。79~85/明日への具象展出品。81/東京セントラル美術館油絵大賞展。84~87/日本青年美術家展。84~85/文化庁在外研修員としてフィレンツェ(イタリア)滞在。92/JAG展(池田20世紀美術館)、東海の作家達展(愛知県美術館)。93・94/I MA「絵画の今日」展。94・2010/個展(名古屋画廊)。2002/DOMANI・明日展。所蔵:東京都現代美術館ほか。現在:二紀会委員、名古屋造形大学名誉教授。
1960年代の終わり頃、上野の東京藝術大学の市野英樹さんのアトリエを訪ねたことがあった。当時の藝大は美校も音校もこげ茶色の木造洋館で明治のままだった。美術学部も音楽学部も昔のまま美校、音校と呼ばれていた。校舎に入るとほんのり明るく、高い天井のアトリエで市野英樹さんはほぼ室内と同色の絵を描いていた。グレー、イエロー・オーカー、ローシエナが基調で少し目が慣れてくると、描かれているテーマが浮かび上がってきた。それは室内風景で、目を凝らすと空間の中に人々が登場した。交わされる会話は清澄な空気の中で、ゆっくりと時が進む。そして美校の、壁をつたわって明り取りの窓につながっていく。当時の絵画の流行とは全く違う作品に出会ったのだ。1969年10月、東京都美術館の二紀展で峻烈なデヴューとなった作品だった。岡田信一郎設計の旧都美術館にふさわしい作品だった。第2室に130号2点が存在感を示していたのだ。130号は大作で、表層的な鮮やかさと力でぐいぐいおす作品の中で新鮮だった。深くじっくり描きこんだ表現は今日に至る。市野英樹さんとは二代に渡る。父上の長之介さんと、私の父の正雄とは長いお付き合いで市野英樹さんとは、何十年と数えたら良いのだろう。市野英樹さんの作品は語りかける作品で、いままで作品は語り続けている。深く味わいがあり絵とともに過ごせば思索と豊かさが得られよう。(日本芸術院会員 早稲田大学栄誉フェロー、名誉教授)
■市野英樹 略歴:1942/名古屋市生。67/東京藝術大学(牛島憲之教室)卒業。69/同大学院修了。69~/二紀展(78宮本賞、87菊華賞、90鍋井賞、92文部大臣奨励賞)。75/第18回安井賞展(以後76,78,79,80,81,82年)。76/現代日本美術展。78/個展(坂崎乙郎企画、紀伊國屋画廊、東京都新宿)。79/二紀会委員。79~85/明日への具象展出品。81/東京セントラル美術館油絵大賞展。84~87/日本青年美術家展。84~85/文化庁在外研修員としてフィレンツェ(イタリア)滞在。92/JAG展(池田20世紀美術館)、東海の作家達展(愛知県美術館)。93・94/I MA「絵画の今日」展。94・2010/個展(名古屋画廊)。2002/DOMANI・明日展。所蔵:東京都現代美術館ほか。現在:二紀会委員、名古屋造形大学名誉教授。